「やさいマン」に惹かれて臼杵市へ。お祭り、花火、盆踊り。地域の人と過ごした「日本の夏」 

大分県臼杵市 下南こども園

6歳、3歳

2週間

私たちは海外に暮らす4人家族です。毎年、こどもたちの夏休みには日本へ一時帰国しています。今回は、6歳の息子と3歳の娘と一緒に、大分県臼杵市の「下南こども園」で2週間の保育園留学を体験しました。

参加のきっかけ

保育園留学を知ったのは、SNSでたまたま見かけたことがきっかけでした。

初めて知ったとき、「まさに私たちが望んでいたものだ!」と感じました。海外で暮らす私たち家族にとって、こどもたちが日本の保育園に通い、日本語の環境の中で日本の文化や暮らしに触れられることは、とても貴重な機会です。

特に、日本のお友達との関わりを通して、本や映像から学ぶ日本語ではなく、同年代のこどもたちが実際に使っている「生きた日本語」に触れてほしいと思っていました。普段、私以外の大人から日常的に日本語を聞く機会が少ないこどもたちにとって、先生やお友達と日本語で過ごす時間そのものが、大きな学びになると感じています。

昨年は北海道・厚沢部で初めて保育園留学を体験し、今回は2回目。夫とも相談しながら、園での活動や理念、宿泊環境、立地などを見比べ、家族に合う留学先を探しました。

そんな中で出会ったのが、大分県臼杵市の下南こども園です。園の紹介を見ている中で、「やさしい心を育てる『やさいマン』」という取り組みに一目惚れ。「ぜひここにこどもたちを通わせてみたい」と思い、ほとんど迷うことなく今回の留学先に決めました。

出発の日は、羽田空港から飛行機で大分空港へ向かい、そこからレンタカーで臼杵市へ。息子は昨年の保育園留学のことをよく覚えていたこともあり、「今年はどんなところなんだろう?」と楽しみにしている様子でした。

一方、娘は新しい環境に慣れるまで少し時間がかかる年齢。少しドキドキする気持ちもあったと思いますが、「にぃにがいれば大丈夫」と、家族みんなで新しい土地で始まる夏の生活を楽しみにしながら、臼杵市へ向かいました。

初日の様子

初日は、園のみなさんが歓迎会を開いて迎えてくださいました。

まさか初日からみんなの前に座って質問に答えるとは思っていなかったので、ふたりともかなり緊張していました。娘はガチガチに緊張していましたが、息子は緊張しながらも、みんなからの質問にしっかり答えていました。

先生方やこどもたちが温かく迎えてくださったことで、ふたりとも「自分たちを歓迎してくれている」ということを感じていたのだと思います。

保育園のこと

園では、息子が大好きなサッカーを遊戯室でたくさん楽しませてもらいました。サッカーを通して仲良くなったお友達とはすっかり意気投合。最後には、「大切なモロッコのユニフォームをあげたい」と言い出すほどでした。その姿を見て、親として目頭が熱くなりました。

クッキングの時間にはクッキーづくりも体験し、家に持ち帰ってきたクッキーを得意げに見せてくれました。

娘は、おままごとやパズル、ビーズとおしなど、指先を使った遊びがお気に入りだったようです。また、毎朝のお歌の時間で覚えた歌を家に帰ってからも毎日のように歌っていました。保育園留学を終えた今でも、ときどき歌っています。

ちょうど夏祭りの時期だったこともあり、園では盆踊りの練習もしていました。家に帰った息子が「こうやってやったんだよ」と嬉しそうに踊って見せ、それを娘が真似していたのも印象に残っています。

外遊びでは、真夏の滞在ということもあり、プールや水遊びをほぼ毎日のように楽しみました。水風船や水鉄砲で遊んだり、野菜の収穫を体験したり、ひまわり畑へ連れて行っていただいたり。普段の生活ではなかなかできない経験をたくさんさせてもらいました。

毎日のお迎えでは、「今日は何を食べた・食べなかった」「お昼寝はこんな様子だった」など、先生が細かなところまで丁寧に教えてくださいました。さらに、滞在中に撮ってくださった写真を園長先生がUSBにまとめてくださり、家に帰ってから、親が見ることのできなかった園での姿をゆっくり振り返ることができました。

そして、今回特に心に残ったのが歓迎会と送別会です。

初日は緊張していたこどもたちが、2週間後の送別会ではすっかり園の一員になっていました。夏祭りに向けて毎日のように練習し、お友達と一緒に行事をつくっていく。その姿を見ながら、「特別な体験をしに来た」というより、本当にこの園の一人の園児として日常を過ごせたのだと感じました。

最終日には、車が見えなくなるまで園のみなさんが手を振ってくださり、こどもたちも車の中から「バイバーイ!大好きだよー!」と大きな声で手を振り返しました。初日には緊張していた娘の変化を思い返すと、嬉しさと寂しさが入り混じり、胸がいっぱいになりました。

宿のこと

今回の滞在先は、おためしハウス「ほっとさんの家」。広い平屋の一軒家で、家族4人でゆったりと過ごすことができ、とても快適でした。

普段はベッドで寝ている私たちですが、今回は布団での生活。毎朝こどもたちと一緒に布団を畳みながら、「なんかトトロのおうちみたいだね」と話していたことも、今となっては楽しい思い出です。普段とは少し違う、日本らしい暮らしを家族みんなで楽しむことができました。

キッチンには電気コンロや調理器具など、生活に必要なものが一通り揃っていたので、簡単な料理をしたり、スーパーのお惣菜を利用したりしながら過ごしました。

今回は、普段の生活をそのまま持っていくというよりも、2週間の夏休みを思いきり楽しむことを大切にしていたので、園が終わったあとは町へ出かけたり、地元のお店を開拓したりすることも楽しみの一つでした。

夫は普段からリモートワークをしているため、滞在中も仕事をしていました。時差の関係で、家族が落ち着いた夜の時間を中心に仕事をしていましたが、通信環境で困ることはありませんでした。広い平屋なので、もし夫婦ふたりでリモートワークをする場合でも、それぞれ別の場所で仕事ができるくらい、十分な広さがあると感じました。

地域のこと

臼杵で過ごした2週間は、園での時間だけでなく、町を歩いたり、地元のお店を訪れたり、地域の方と交流したりしながら、その土地の暮らしに触れられたことも大きな思い出になりました。

宿の周辺にはスーパーやディスカウントショップ、飲食店などが思っていた以上に揃っていて、買い物にもほぼ毎日のように出かけました。大分名物のとり天やお寿司、道の駅で購入した新鮮な野菜、少し甘めの九州だれの納豆など、普段の海外生活ではなかなか味わえないものを食卓に並べるのも楽しみの一つでした。

園が終わったあとは、白浜ビーチへ出かけたり、臼杵市の城下町を散策したり、週末には少し足を延ばして、大分県内のさまざまな場所へ出かけました。

高崎山では、300匹以上の猿が目の前を行き交い、息子の足元をすり抜けていく迫力に、思わず固まって動けなくなる場面も(笑)。「大分県の夏を満喫しましたね」と言われるほど、家族でたくさんの場所へ出かけ、思い出をつくることができました。

中でも特に心に残っているのは、夕日の差す臼杵市の城下町を、こどもたちとアイスを食べながら歩いた時間です。昔ながらの街並みを眺めながら町を歩き、そこで出会った人たちと会話を交わす。観光地を訪れるだけではなく、町の日常に少し入り込むような時間を過ごせたことが印象に残っています。

そして今回、私たちが強く感じたのが、臼杵市の人の温かさでした。

偶然にも、臼杵市で暮らす日仏ご夫婦のご家族と出会うことができました。私たちもフランス人の夫との日仏家族ということで、市役所の方がご好意でつないでくださったのです。

一緒にお祭りへ出かけたり、レストランで食事をしたり、ご自宅に招いていただいて一緒にご飯を食べ、夜には花火をしたり。娘と同じくらいの年齢のお子さんもいて、こどもたちにとっても楽しい出会いになりました。「日本の夏」らしい思い出をたくさん作っていただき、今でも心に残っています。

市役所の方々にも滞在中ずっと気にかけていただき、最後には一緒に食事をする機会までつくってくださいました。その席で、城下町を舞台にした映画「なごり雪」の話を何気なくしたところ、そのことを覚えていてくださり、翌日には映画にちなんだ地酒をプレゼントしてくださったことも。そんなさりげない心遣いが、とても嬉しかったです。

また、ちょうど地域の夏祭りの時期だったため、伝統行事「柴引」を間近で見ることもできました。地域のこどもたちや大人たちが真剣に参加する姿を目の前で見ることができ、その土地で長く受け継がれてきた文化に触れられたことは、貴重な経験でした。

観光客向けに用意された体験ではなく、実際に地域で暮らしている方々と同じ場所で、同じ季節の行事を楽しむ。そんな時間があったからこそ、臼杵市という町をより身近に感じられたのだと思います。

今回の滞在を通して、臼杵市は観光するだけの場所ではなく、そこで暮らす人や日々の風景まで含めて好きになれる町だと感じました。

滞在中に訪れたおすすめのお店

TRITICI:宿から徒歩10秒ほどの一軒家ベーカリー。臼杵市のマスコット「ほっとさん」のパンもあり、滞在中の朝食によく利用しました。

韓国苑:特急レーンでお肉が運ばれてくる焼肉店。

らーめん BANRI:こってり系のラーメンが楽しめるお店。

ここごろう倶楽部:地元の中華料理店。

凡と凛 Dining:地元のお肉を使った丼が印象的でした。

白楽天:店主が九州ラーメンで胃もたれした経験から生み出したという名物ラーメン。

カニ醤油:みそソフトクリームがおすすめ。

かぼす工房:かぼすソフトクリームや自家製ソースのかき氷が楽しめます。


さいごに

初めての場所で緊張していたこどもたちが、2週間後には「まだいたい」「明日も行くでしょ?」と言うほど、その場所を好きになっていた。その変化を見て、こどもたち自身が新しい環境の中で人と出会い、自分の居場所をつくっていく力を持っていることに気づかされました。

そして、毎回驚かされるのが日本語の成長です。先生やお友達とのやり取りの中で、普段とは違う日本語の表現を吸収し、家に帰ってから先生の言葉を一言一句覚えて暗唱することもあります。2週間という短い期間でも、「生きた日本語」に触れることで大きな変化を感じます。

保育園留学は、こどもたちにとって日本の文化や自然に触れる機会であると同時に、親にとっても、普段とは違う環境で過ごすこどもの姿を見られる時間です。

そして今回、私たち家族にとって臼杵市は、ただ訪れた場所ではなく、「また帰ってきたい」と思える場所になりました。

夫とも「日本で一番人が温かいんじゃないか」と話したほど、臼杵市ではたくさんの人に自然に気にかけてもらいました。こどもたちも今でも「また臼杵市に行きたい」と言っていますし、夫は「もし老後に日本へ移住できるなら、ここがいい」と話しています(笑)。

海外で暮らしているからこそ、日本では当たり前に見える園での日常や、地域の人との何気ないやり取りが、とても大切な日本文化の一つなのだと改めて感じました。

今年の夏、臼杵市で過ごした2週間は、こどもたちだけでなく、私たち家族にとっても、忘れられない夏になりました。

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