保育園留学と非認知能力の成長について
発達心理学専門家・内田伸子教授インタビュー
#非認知能力
#子どもの成長
内田 伸子教授 プロフィール
IPU・環太平洋大学教授、お茶の水女子大名誉教授 心理学者(発達心理学、認知心理学、発達心理言語学、保育学が専門)
発達心理学、言語心理学、認知科学、保育学が専門。長年、ベネッセ「こどもちゃれんじ」の監修に携わり、NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発・コメンテーターなども務める。子どもの発達段階に着眼し、分析データを基に、子どもの言語発達・認知発達をより良くする具体的な教育法や援助の方策を説く。Newspicks教育系動画にも出演。
内田伸子先生のインタビュー切り抜き(2分ver)はYoutubeでもご覧いただけます。
保育園留学に感動した。まさに非認知能力が育まれているんじゃないか。
ー保育園留学のことをご存知でしたか?
内田伸子と申します。発達心理学をずっと専門に、こどもについて研究してまいりました。保育園留学は77歳にして初めて聞いた言葉でした。はじめは1週間、あるいは2週間で一体どういうふうに親もこども体験が広がるんだろう?と実はすこし半信半疑だったんです。
ー実際に留学を受け入れている園の先生たちのお話も聞いていただきました。いかがでしたか?
北海道厚沢部町の認定こども園はぜるの先生たちのお話や、さまざまな留学のエピソードを伺いまして、一言でいうと、もう私は感動しました。「あっさぶに忘れ物をしていったら、またここに帰れるから」と言って、あえて忘れ物をしたという5歳の男の子のエピソード。「この保育園はどうしてこんなに空が大きいの?」とはぜるの先生に聞いていた子のエピソード。ふだんビルの谷間の保育園で過ごしているこどもは、その厚沢部の空の大きさにも感動してるわけですね。そうかと思えば在園児の子が、留学生の子が東京では40階に住んでいると聞いて驚き、厚沢部で゙一番高い4階建てを指さしながら数えて、「あの子は空の上に住んでいるの?」と言ったり。留学生も、受け入れた在園児のこどもたちもまた、ともに自分の世界を広げているんですね。
ーまさに、こどもたちが世界をひろげて成長しているエピソードですよね。先生は、非認知能力の専門家でいらっしゃいますが、保育園留学をどうご覧になりますか。
そもそも非認知能力についてはね、ちょっと誤解が多くてですね。「認知ではない能力」と間違えてるところがありますが、そうではないんです。知能テストや発達検査で数値にできる能力以外の全ての認知能力のことを「非認知能力」といいます。社会性、それから自制心、それから挑戦力 です。保育園留学は大自然に触れ、新しい人達や価値観に出会う体験ですが、これら非認知能力がまさに育まれているんじゃないかと思います。
ーどのような点が成長につながるのでしょうか。
年齢ごとに様々な成長の要素があると思います。ひとつの側面としては、3歳ぐらいから徐々に「メタ認知」という自分の認識を振り返るような力が出てくるんですよね。そしてだんだんとそれが出てきて人と比べたり、今の環境との違いを比べたりと、比較対照できるようになります。ですからこのメタ認知が発達してくる頃に保育園留学に行けると、すごくその体験が自分の世界を広げることに寄与するようになるんじゃないかな、というふうにも思うんですね。
事前にいくつか留学経験者の方に質問させていただいたのですが、その中に、「こどもは2,3日家族で旅行に行った街のことは覚えていないけれど、実際に留学した町のことは実によくわがことのように覚えている」というお話がありました。非常に素晴らしいですよね。この方がなぜ留学に踏み切ったかというと、将来的に本人の選択肢を増やしてあげたいということで。小さいときの記憶が将来の選択肢を広げることになるんじゃないか、というお話もとても印象的でした。
お母さんやお父さんが笑っていると、こどももハッピーになる。
ー親も世界が広がる体験になった、という声も多くいただきます。
こどもは、親がどういうふうな状況なのかっていうのにものすごく敏感で、お母さんやお父さんが笑っていると自分もハッピーになるんですよね。ですからやっぱりそれはお子さんの笑顔見たら親御さんは笑顔になりますけれど、実は合わせ鏡のようなもので、やっぱりこどもも親が嬉しいとも嬉しいわけです。
熊本県天草市崎津に留学されたお父さんと息子さんのお話を聞きましたが、今まであまり子育てしたことがなかったお父さんでもね、親も楽しそうにしながら一緒に車に乗って、そしていろいろ今まで見たこともない景色を見る海を見る、海岸に行く、そんなの一緒にしながら、そして新しい保育園に行く体験が、やっぱりお子さんの心、非認知能力をすごく成⻑させたんじゃないかなと感じます。
熊本県天草市崎津へ留学されたご家族の体験談
父子ふたりでの参加。男の約束をしたり、一緒に夕食を作ったり、日ごとに息子との絆が深まりました。
この体験談を読む
園の受け入れ体制がすごく整っていることが、小さなひとたちにとってもいい
ーこどもの発達専門家の視点から、気にしておくべきポイントはありますか。
ただ実際、繊細なお子さんもいらっしゃいますよね。その子達はなかなか最初の安全基地から出られないということもあります。傾向として男のお子さんはちょっと発達がゆっくりなので、女の子に比べて社交的ではない子が多いので。ただ、受け入れをする園の準備が非常に行き届いているのだな、という印象を受けました。
ー園側の受け入れ準備や体制ですね。どのような点が評価できるでしょうか。
それからはぜるの例だと、とにかく受け入れるお子さんの名前を壁に貼っておいて、日本の地図を見せながら「誰々ちゃんがここから来るんだよ」って言うような準備をされてるわけですよね。在園児にとっては、「新しいお友達がまた来てくれる。しかも、ここから来てくれるんだ」という受け入れやすさに繋がっている。しっかりと準備をされているっていうところがお子さんにとっては、抵抗なくそこに溶け込めることができてるんじゃないかなと思いました。私も留学したいですね(笑)。もちろん、お子さんによってはすごく人間関係に敏感なお子さんもいるので、配慮は必要かもしれませんね。
保育園留学は、希望。私たちはこどもたちに合わせて”環境を変えること”ができる
ー最後に一言お願い致します!
2021年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、こども゙についていろいろと論文を書いていますが、ダーウィンの進化論に触発されて「強い者が生き残るのではなく、環境に合わせて”自分を変えること”ができたものだけが生き残ってきたのだ。」ということをおっしゃっています。
しかし私は、この保育園留学の仕組みを聞き、体験者の話や園の先生の細やかな準備の仕方についての配慮などを聞いているうちに「そうじゃない。環境に合わせて自分を変えるのではなく、私たちは、こどもたちに合わせて”環境を変えること”ができるんだ。 よりよい環境を選べるんだ!」という実感を得ました。
保育園留学の発起人であるキッチハイクCEOの山本さんがおっしゃっていましたが、保育園留学の仕組みって「希望」なんだなと。こどもの未来、それから家族の未来、そして地域の未来を約束してくれるような事業なんだなっていうことを、先生や自治体、ご家族の皆さんのお話を伺うなかで感じました。ぜひ私も「おばあちゃんの読み聞かせ」というパートの子育て支援員として留学させてもらえないかな、と思っています!(笑)
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